タワーリング・インフェルノ
午前中ふらっと1人で映画館へ。
懐かしの名作を上映している「午前十時の映画祭」に行ってみようかなと。
いま、「タワーリング・インフェルノ」をやっているのだ。
超高層ビルでの火災をテーマにしたパニック映画の傑作。
小学生の頃にテレビで見た薄ぼんやりした記憶しか残ってないので、ちょっと見てみたいなーと思って出かけた次第。
さて、見ましたよ。
しっかりと。
映画ファンとしてはね、色んな見どころはあったけどね。
ポール・ニューマンとスティーブ・マックイーンの共演とか、フェイ・ダナウェイの華麗な美貌とかね。
フレッド・アステア、老齢にして粋でオシャレな身のこなしやなーとかね。
当時の特撮技術としては、迫力あるなーとかね。
しかし、それだけではなかった。
重いテーマを見せつけられたみたい。
今、この時代に。
138階建て超高層ビルの竣工式の日。
135階のフロアで行われていた竣工記念パーティーの最中にビル内で火災が発生する。
これ、工事の際に施工業者が工事費を安く上げるために指示されたものとは違う電気配線を使っていたためにおこった人災なのよ。
ポール・ニューマン扮するこのビルの設計者は、この施工の事実を知り猛抗議するが、施工主の社長はどっかで聞いたことあるような言葉でこれをかわす。
「安全基準はクリアしている電線を使ってる。」
「法規は守っているんだ。」
うーん、なんだかこのセリフがミョーに引っ掛かった。
最近でもよく使われてそうな言葉だよね。
さらに、ポール・ニューマンは安全システムにも不安が残るので万が一の危険性を考えて、パーティーの延期を進言するがこれも無視される。
「大したことはないだろ。」
「パーティーには市長も呼んである。」
ここでパーティーを中止にしていれば、少なくとも予定を変更して1階で催しを行うようにしていればこんな大惨事になることはなかった。
これが2つ目の人災なんだ。
一体何を守りたいのか。
何を誇示したいのか。
みんながこのビルの完成を喜んで楽しみにしている。
軽いボヤ程度の事故で、みんなが乗って走りだした列車を止めるわけにはいかん。
変な危機感をあおったら、そこから大損してしまう。
その後何もなかったなんて言ってみろ、赤っ恥をかくことになる。
そういうこと?
いきなり危険な状態になることなんかないんだ。
起こりもしない可能性をことさら強調して反対ばかりするのはナンセンスだ。
それで経済はどうするんだ、経済は。
無責任に反対ばかりして、景気の回復が見込めなかったら飢え死にするんだぞ。
話、逸れてる?
なんだか、いま起こってる色んな問題に当てはまるような気がしてくるんだけど。
消防隊長に扮するスティーブ・マックイーンが、ポール・ニューマンに会っていきなり先制パンチ。
「設計屋は上へ上へと作りたがる。」
そして、ボヤ程度なら安全に問題はないと、パーティー中止を渋っていた施工業者の社長にもぶちかます。
「安全な火事なんてない。」
「火をなめるな。」
いざ、火災が激しくなり極限状態に追い詰められた時、人々は一致団結して避難するために助け合う。
消防士たちも勇敢に仕事をする。
映画の冒頭で、「この映画を勇敢な消防士たちに捧げる」というような内容のテロップが出るのだが、これは救助にあたった消防士の美談で済まされる話ではない。
劇中、色んな人たちが死ぬ。
1人ひとりにそれぞれの人生、ドラマがあり、それが無残に終わってしまう。
そして事故の後は、「死者○○名」という一括りの数字で表現されるだけの存在になってしまう。
マックイーンも最後に言う。
「死者は200名以下だ。」
「同じようなビルで、いずれ死者1万人の事故が起こるぞ。」
1万人はマズイが、200名以下ならOKだ。
そんなわけはない。
そんな意味のセリフでもない。
しかし、人の命が数字になってしまうと、そんなニュアンスすら与えかねない。
繰り返すが、これは人災による大惨事の物語だ。
ポール・ニューマンのこのセリフで、映画は締めくくられる。
「人の愚かさの象徴として、このビルは残しておいた方がいいかもしれない。」
映画の最中は、こういう状況になった時に自分はどういう行動をするのかってことを必死に考えていた。
でも、考えるべきは、こういう状況にならないために何をしていくべきか、なんだと思う。
決して映画だけのファンタジーではない。
現実に起こりうる惨事。
そう考えなければいけないんだと思う。
こんな事態が起こった時に一体だれが責任を取るのか。
だれも責任なんか取れるはずはないんだ。
そして、人間がやることだからね。
必ずミスは付き物だ。
それも前提にしておかないと、って気もするよ。
映画館を出たら、ものすごく綺麗な青空と雲。
いつもの田んぼと一緒にパチリ。
こんな景色をいつまでものんびりと眺めていたいんだ。
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