秀吉と利休

茶の湯を極めた千利休は、時の天下人豊臣秀吉の怒りを買い切腹させられる。




それまで秀吉の絶大な信頼を受け、茶頭としての務めに留まらず、政治のことにも意見を求められるほどの地位に置かれていた利休が、なぜ突然秀吉に処罰されたのか。




諸説あるが、それだけにこのあたりの物語は小説の題材として楽しめるところが多い。










「美」に対する捉え方で、2人のこんなエピソードがある。




利休邸の庭に朝顔が見事に咲いていると聞いた秀吉が、一見しようと訪れる。ところが、庭の朝顔はすべて刈り取られていた。不審に思いながら茶室に入ると、床の間に竹筒が置かれそこに1輪の朝顔がいけてあった。




1輪のみの朝顔、そこに際立つ美を表現した利休。




秀吉は、その究極の美に深く感動した・・・と言われるが。










実は違う解釈も出来る。




これこそが凝縮された美であると言わんばかりの利休の押しつけがましさに、秀吉は辟易した。野に咲く1輪の花の美しさとは訳が違う。これは自然の美しさへの冒とくではないか。










また、秀吉は利休のことをこのように見ていた。




「侘び・さび」と表現されるように、利休の佇まいは落ち着いた物静かなイメージが強いのだが、実は全く違うのだ。




利休の美へのこだわり、美を追求する様は激情的であり、恐ろしいまでの情念が宿っている。




殺気を感じるほどに。その情念は一体どこから来ているのか。










今回の話は、加藤 廣 著「秀吉の枷」、山本 兼一 著「利休にたずねよ」を参考にしている。










「秀吉の枷」というのは、「信長の棺」に始まる本能寺の変に絡む3部作の第2作目に位置づけられる小説。

好き嫌いはちょっと分かれるかもしれないが、私は好きな方だ。秀吉の出自の秘密がテーマになっているファンタジーである。




「信長の棺」だけではちょっと分かりにくい部分があるので、この「秀吉の枷」そして「空白の桶狭間」をセットで読むともっと楽しめる。










「利休にたずねよ」・・・これは文句なく面白い。

情念とも呼べる利休の美への拘りはこの小説の話である。はたして、その源流とは。




この本は究極のラブストーリーと呼べるのではないだろうか。

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