親友
高校2年で同じクラスになったのが最初の出会い。
「バンドのヴォーカル探してるんだけど、誰かいない?」
って聞かれて
「いやー、分からないよ。」
とかなんとか答えたのが、記憶に残ってる最初の会話。
自然に仲良くなった。
気持ちがとても優しくて、もの凄く不安定だったよね。
突然、1週間くらい学校来なくなったと思ったら
「自転車で九州まわってた」
とか言ってひょこっと学校に出て来る。
「なんでまた?」
って聞いたら
「いやー、なんとなく、出かけたいって、思ってね。」
夏休みの勉強合宿では夜遅くまでしゃべった。
星を見ながら、好きな子の話を聞かされた。
ホント、延々聞かされた。
それ以来、卒業までずーっと聞かされることになった。
3年生でも同じクラス。
2年連続の男クラ。
大財3丁目交差点にあったローソンで、深夜のバイトしてたよね。
オレ、1度チャリで夜中に遊びに行ったんだ。
だれもいない深夜のコンビニ。
2人で1時間以上しゃべったよ。
ジュースおごってくれた。
ポケットから出した100円玉を防犯カメラにかざしてレジに入れる仕草が、カッコいいなって思ってしまった。
オマエに言われて、ずっと残ってる言葉がある。
「クラスの中に3人、凄いなーって思う人がいる。」
「その3人の才能がほしい。」
「Iノセの努力。Hロツくんの頭脳。そして、キスくんの人柄。」
その言葉、結構支え続けてくれたんだ。
ずっと。
卒業式が終わって、あの子のクラスに写真撮りに行った。
オマエとあの子のツーショット写真、結局その後見せてもらったのかな。
覚えてないや。
あ、この前、教員免許更新講習で会ったよ。その子と。
卒業してから、新聞配達をしながら予備校に通ったオマエ。
新聞奨学生ってやつ。
八王子だったっけ。
2回くらいオレの小金井のアパートにも泊まりに来たね。
学芸大のキャンパスも一緒に歩いた。
学食で一緒に昼飯食った。
夜は武蔵小金井駅北口にあったとんかつ屋さんのカウンター。
そこの大将と少ししゃべったのを覚えてる。
「キャベツが好きなんですよ。」
とかなんとか言って。
その時は、学芸大受けるつもりだとか言ってたけど、結局次の年神奈川県にある大学に入学した。
大学では本当に好きな部活に出会ったんだな。
ほとんど会うこともなくなった。
オレが大学3年、オマエが2年になった春先くらいだっただろうか、電話でしゃべった。
オマエ少し酔っ払ってたな。
それが、最後だった。
1990年8月11日。
そこでオマエの時間は止まってしまった。
実家に帰ってる時、ニュースで知ったんだ。
大学で行われた追悼式。
Iノセ、Hロツくん。そしてMツオ、Tロウと一緒に行ったよ。
その時、壇上に掲げられたオマエの写真を見て思った。
柔らかい、イイ笑顔だなって。
こんな素敵な顔で過ごしてたんだなって。
なんとなく、オマエの部活の活動記録をHPで見たんだ。
入学して1年ちょっとの間に、色んな景色を見たんだなって思った。
自分の足で。
最後にオマエが見た景色。
オレの想像も出来ないような世界だったのかな。
オレがこの先、一生見ることもないような景色だったのかな。
なんとなく、見てみたいって、思ってるんだよ。
最近、ちょっとだけ。
いつになるか分からない。
可能であれば、ほんのちょっとでも。
21年。
オマエが生きた年数。
いつも思うのは、短いな、って気持ちだけではないんだよ。
追悼式で見た写真。
オマエの笑顔。
あれが頭の中に焼き付いてる。
幸せだったんだな。
心が輝いてる時間。
そういう時間を過ごせたら。
いつもそう考える。
オマエのことを思い出す時。